死んでも治らない (光文社文庫)

死んでも治らない (光文社文庫)

17年間勤めた警察を辞めた大道寺圭は、本を出版する事になった。とぼけた事件を書き綴った「死んでも治らない」。この本がきっかけで次々とまぬけな犯罪者が現れて、大道寺は事件に巻き込まれていく! (「MARC」データベースより)

滑稽さの中に見えるハッとさせるような冷たさが秀逸。
一遍一遍は温い感じのコージーミステリに過ぎないのですが、そこは若竹七海、きっちり最後の最後に落としてくれます。『僕のミステリな日常』に匹敵する出来*1ではないでしょうか。
見ず知らずの人間からミステリ小説の添削を依頼される「殺しても死なない」は泣く子も黙る辛口書評娘として活躍していた筆者の姿も垣間見れて思わずにんまり。ただ作中では素人相手だけにだいぶ辛さ控えめにはなっていますけどね。
間抜けな犯罪者の間抜けな行動を描いていますが、これは「笑い」を求める小説ではありません。それを読者はすべてを読み終えたときに知ることとなります。これは大道寺の深く暗い決意に戦慄するホワイダニットなのです。

*1:各話の質は『僕の〜』の方がいいかなって気はします。