犬はどこだ

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

なんだ、この怖い小説は。ライトな語り口で読みやすく、本格ミステリとしての仕掛けも良く出来ているんですが、そんなことはどうでもよくなりました。こんなに後味悪く物語に幕を引くのが上手い作家は久しぶりにみたよ。
こういう話を米澤穂信が書いたってのもびっくり*1。スローカーブの後のストレートが通常より速く感じるように、いい感じにぬるーい（というイメージの）作家が投げつけてきた恐怖だからこそ、余計に効いちゃったんですよね。これが麻耶タンだったら、「またいやーな感じの話書いてるよ」で終わって、それほどインパクトはなかったと思うわけですよ。思うわけですよ。
そういう作家自身のイメージを利用したコントラストも計算して書かれているんだとしたら、黒すぎて怖い。ガクブルる。なんというかこの人の描くダークサイダーなキャラをみてるとありえない話じゃないと思うんですよね。なんかいろいろ計算してる匂いがぷんぷんして。だから、序盤を読んで「犬捜しの設定関係ねー」とか思ってた自分の浅はかさを激しく罵倒したい気分です。

*1:米澤作品をあまり読んでいないことが影響した