006:ラス・マンチャス通信:既

ラス・マンチャス通信

ラス・マンチャス通信

第16回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞。同賞の優秀賞を受賞した『ボーナス・トラック』は既読で、作風が自分の好みに合致したのも手伝い、大変楽しめた。ひとつ不幸があったとすれば、同じ回の応募作に『ラス・マンチャス通信』があったことだろう。
読者を飲み込む世界観は圧倒的。不条理なことだらけなのに、有無を言わさず読み手を引き摺る力には脱帽するのみ。浅暮先生の『ダブ(エ)ストン街道』を読んだ時の感覚を思い出した。主人公による伝聞の形だけで「」を使った会話を一切用いないスタイルも作品をより幻想的に仕向けていたように思える。
ただ、その強烈すぎる世界観ゆえに、クライマックスの衝撃が緩和されてしまっているのは残念なところ。それまでに常識を外れた現象ばかり出てきていたので、あの「狂気」がそれほど映えるものではなかった。コントラストの不足。なんか惜しい。でもインパクトはあったし、面白かったことは間違いない。次回作が楽しみ。