002:四日間の奇蹟

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

脳に障害を負った少女とピアニストの道を閉ざされた青年が山奥の診療所で遭遇する奇蹟。ひとつの不思議なできごとが人々のもうひとつの顔を浮かび上がらす ....(amazonより)

言わずと知れた『このミス大賞』の第一回大賞作品なわけですが、ミステリではありません。テーマは魂の再生ということでいいと思います。


この作品を語る上でどうしても避けて通れないのが、先行の名作ミステリと同じ仕掛けだという点ですが、実際にその部分のネタが割れてても結末には影響がさほど感じられないので、そんなに気にし過ぎなくていいような気がしないでもありません。北村薫の名作『ターン』にも有名な先行作品がありますし、その先行作品自体もやはり超有名作品の仕掛けが下地になっているであろうことは容易に想像できますから。


ただ気づいちゃった人もいると思うので言いますけど、「ネタ割れして結末に影響がない」ってことはですね、じゃあその仕掛けってなくてもいいじゃん、てなりますよね。そうね。僕も不要だなと思います。ラストのある場面で個人的なツボをつかれた箇所があったのですが、別の過程を通ってラストに辿りついても、たぶん同じ思いだったでしょう。あくまでその場面のシチュエーションにグッときたに過ぎません。逆に違う過程を通った方がより大きい感動が得られた可能性は高いと思います。


ただ筆力はありますよね。場面場面では美しい描写があったりします。たぶんこのあたりの将来性が評価されたんじゃないかなと思います。BSマンガ夜話いしかわじゅん井上雄彦を評して、「一枚絵としての完成度は高いけど漫画は下手だ」と言った事がありますが、まさにそんな感じです。売れたのは昨今のトレンドにマッチしたからでしょう。


ネタばれ->http://d.hatena.ne.jp/amaikoi/00000002


でもおまえらこれだけは言わせてください。

『そのケータイはXXで』よりは数倍はマシ。