008:BG、あるいは死せるカイニス

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)

天文部合宿の夜、優等生として慕われていた女子高生が殺害されます。その事件を皮切りに女子高で連続殺人が勃発。最初の被害者の妹が探偵役となって事件を解決します。石持浅海さんの最新長編『BG、あるいは死せるカイニス』は、オーソドックスな味わいの謎解きが楽しめる端整な本格ミステリで、『アイルランドの薔薇』や『月の扉』を楽しんだ読者にもおすすめできる快作――なのですが、一点明らかに異色な特徴が含まれています。全人類生まれたときはすべて女性、のちに生物的に強靭な特質を備えている者が男性化するという世界が舞台となるのです。(東京創元社HPより抜粋)

独自の世界を創り、その中だからこそ成立する作品を見事に描いています。そもそも生まれた時は全員女性で、途中で男性化するという発想がすんごいね。しかも男性化する人間は限られているから男性の割合はたいそう低いときた。女子高が共学に移行して初年度に入学した男子生徒みたいなポジションだな。
語る上で、どうしても引き合いに出したくなるのが『人格転移の殺人』(西澤保彦)。あちらはトリッキーな色合いが強かったのに対して、本作はオーソドックな謎解きになっています。特異な設定の生み出す謎が精巧に書かれているので、中盤まではまったく先が見えてきません。予想以上に惹きつけられました。ただクライマックスにたどり着く前にヒントを出しすぎ、ヒントなんて生易しくないな。あれは答えだな。伏線じゃなくて、解答。筆者自らネタばれですよ。そんなに手の内見せなくていいから。もっと隠していいから。結末の驚きを薄めないでください。
BGという言葉に隠された意味を主人公が実感する場面は腰砕け。たしかに切実だけど。なんだかなぁ。