推薦文の魔

雨恋

雨恋

世界がずっとこのままであればいい。ぼくは雨が永遠に止まないことを祈った、静かに深く彼女とつながりながら……。ありえない恋、ラスト2ページの感動。2005年ベスト1確実!の恋愛小説。 (新潮社HPより)

松尾由美なのにどストレートなお話

幽霊のために犯人探しをする話。今年はじめに読んだ『ボーナス・トラック』(感想)と同じ設定です。あっちが幽霊との友情なら、こっちは幽霊との淡い恋の話。

「ありえない恋、ラスト2ページの感動。2005年ベスト1確実!の恋愛小説。」という推薦文にはかなり興味を引かれたのですが、書いたのが大森望氏だったので、警戒心は解かずに読み薦めていきました。

初め主人公には幽霊・千波の声しか聞こえず、事件を調査して千波が納得をしていくと、徐々に足の方から姿が見えるようになっていくという設定が面白い。雨の日にだけ現れるというのもいいですね。

ただ全体設定には斬新さがなく、ミステリとしてもだいぶ弱いです。恋愛ものとしても、千波がそれほど魅力的じゃないのであまり共感が持てないというのが正直なところ。なんで主人公が彼女を好きになったのか不思議でたまらない。ネットの恋愛と同じで、見えないからこそ相手への気持ちが大きくなるのかな。むーん。

この作品でいちばんすばらしいのは猫たち。かわいい仕草が手に取るようにわかる、巧い書き方をしています。ねこー!

で、問題のラスト2ページですが、なるほど美しい。やっぱり猫の使い方がうまい。切なくてちょっぴり優しいラストが爽やかな読了感を与えてくれます。