ぐるぐるまわーる
- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1991/09
- メディア: 文庫
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早朝の教室で、高校生中町圭介は死んでいた。コピーの遺書が残り、窓もドアも閉ざしてある。しかも異様なことに四十八組あったはずの机と椅子が、すべて消えていた。級友工藤順也がその死の謎に迫るとき次々現れた驚愕すべき真相とは? 精緻な構成に支えられた本格推理の力作。(「BOOK」データベースより)
ミステリ界のファンニステルローイ*1こと法月綸太郎のデビュー作。『生首に聞いてみろ』を読むために探偵法月綸太郎シリーズを読み潰していこうと書店に行ったら、これしかありませんでした。法月探偵ではないけどデビュー作なので購入。
高校生に探偵役を頼む警察の足取りの軽さにびっくりします。気安い関係だな。
単に舞台設定としてのみ存在する学園ではなく、中世の大学ギルドの頃より学校という空間がもつ治外法権的特性を活かしているのはお見事。ただ終盤に事件が急転するまでが、ちょっと間延びしているのが惜しい。折々で衝撃的な展開を見せてほしかったところです。
筆者は探偵役の工藤順也をいわゆる名探偵のように完全無欠な推理の持ち主にしておらず、間違った推理を自信満々に披露する道化的な役回りもさせたりしています。それでリアリティが生まれるとは言わないけど、身近な感じはしたかな。ただ注目すべきは、そのキャラクター設定自体が物語を二転三転させるための仕掛けになっていることでしょう。筆者の計算の高さを感じます。
結末に関してはあまりにも目まぐるしくひっくり返るわりに、真相を曖昧に終わらせているので不満。
新本格第一世代の実力はじゅうぶんに見せてもらいました。これから次回作以降を早いペースで読んでいくつもりです。ただ僕は筆者と同名の探偵が出てくる小説はあまり好きじゃないので、よっぽどの名作じゃないと毒ばっかり吐くことになりかねません。それがいささか心配の種。ノーカット版については折をみて。
*1:馬面繋がり