いいかんじ

慟哭 (創元推理文庫)

慟哭 (創元推理文庫)

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。(「BOOK」データベースより)

お、これはよかったぞ。
デビュー作とは思えないほどに巧緻な作りをしていますね。伏線はあからさますぎて、かなり序盤の段階である程度結末が読めてしまうのだけど、それを否定する要素をきちんと与える技量はすでに熟練したものを感じさせます。この作品出されたら、さしもの霞流一も勝てないわなぁ。*1
ただ終盤までステレオタイプの警察小説で食傷気味で読んでいたのが正直なところ。読者を引き込むだけのインパクトがないのはちょっと痛いかなー。そういう所感もあって、交互に描かれる宗教にのめりこむ男とどう絡ませるかを興味深く追っていたのですが、これは予想以上でした。後味の悪さは好みが分かれるところはありますが、作品の完成度の高さは間違いありません。

*1:霞流一貫井と同じ回の鮎川哲也賞に応募して落選している。ちなみに翌年は加納朋子にとられいるので、貫井・加納夫婦にはなにやら一物抱えているとかいないとか