そぶ

六とん〈2〉 (講談社ノベルス)

六とん〈2〉 (講談社ノベルス)

前回書いたとおり『六枚のとんかつ』(再読)と『動かぬ証拠』を読んでからのとりかかりました。その努力もカバー折り返しの

支離滅裂な短編集になってしまってすみません。なので『1』を読む必要はまったくないです。

という素敵なひとことで水泡に帰すわけですが、それは予想の範疇、僕オリジナルの言い方をすれば「想定の範囲内」なのでどうしたものでもありません。
一晩で蘇部作品を3冊読了したことに対して、正気の沙汰とは思えないと思われる方もおられましょうが、そもそも蘇部作品を読むのに正気はいりません*1
全体の割合としては半下石刑事シリーズの収録数が多く、保険調査員小野の作品にも絵オチが採用されているので、中身だけ読むと『六とん2』というよりは『動かぬ証拠2』という印象を受けます。じゃあなんで『六とん2』というタイトルなの? そもそもこの適当なタイトルはどうなの?

あとがき
六枚のとんかつ』という言葉はもう口にするのもいやなのだが(なので、以下『六とん』)、私のほかの本がほとんど初版止まりなのに対して、『六とん』の文庫だけはなぜか三年半で十一刷までいったので、『六とん2』を出す羽目になってしまった。
しかし、だれにでも書けるはずのアホバカ・トリックがまったく思い浮かばなかったため、『動かぬ証拠』のシリーズとノン・シリーズを組み合わせるというきわめてインチキ臭い短編集になってしまった。

なんという説得力! ここ最近の作品の中では群を抜く鮮やかな謎解きです(謎解き?)。このあとがきは蘇部先生の自虐力*2が十二分に発揮された名文なので、かならず目を通してください。
前置きが長くなりました。肝心の本編の感想です。絵を使わない方が話が上手くまとまったんじゃないかと思うエピソードがいくつかあり、そのほとんどが半下石シリーズでした。絵オチスタイルのシリーズだけに無理やり挿入した感があって、けっこう上手く書いていただけに残念です。だったらオチじゃなくて挿絵だと思えばいいのですけど、それもなんか無粋かなと。
逆に「地球最後の日」は絵オチの効果が最も発揮されていた気がします。非常におバカさんな話ですけど。そう考えると絵オチってのは馬鹿馬鹿しい話の方が適しているのかもしれないですね。絵が使われていない作品では「誓いのホームラン」がありがちな話ながらも、シンプルで面白かったです。
冒頭におかれた『六とん』シリーズ3篇はシリーズの性格上、当然アホくさいのですが、それ以外の作品は存外まとまっているので、壁が傷つく心配はそれほどなさそうです。ただ、そのまとまりが蘇部作品にとっていいことなのか悪いことなのか。それは当方の知ったことではありません。
あと作品の最後で、急にいい話(「きみがくれたメロディ」)を書いているのですが、これはどうしたことですか? 新堂冬樹の真似ですか?

*1:そんなことはありません

*2:老人力みたいなもんと思ってください