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透明人間の納屋 (ミステリーランド)

透明人間の納屋 (ミステリーランド)

刊行された時期的にタイムリーな話題だったから書きたかったんだろうなぁ。若い年代が関心をもつ契機になることを狙ったことが伺える。まぁ気持ちは分からないでもないが、人間消失の仕掛けは賛否が分かれるのではないだろうか。
登場人物の背景が浮かび上がることによって、トリックが補完されるのは見事で、このあたりは流石なのだが、いささか無理やり感があることも否めない。物語のテーマに合わせ、登場人物を装置として見事に使った仕掛けにはなっている。しかしながら、ただ一点、どうしても納得が出来ない箇所があるので、その点をつかれるとあまり強くは反論出来ない。あれは蛇足だったと思う。
物語としては読めるし(「透明人間」に込めた意味などは秀逸だと思う)、哀愁のある話の締め方にもなかなか心動かされるものがあったので、ストーリー的には満足している。イラストは怖すぎ。