026:マリオネット園

ミーハー。それは毎回のことではあるが、今回は序盤の暗号のくだりで、それが顕著に出ていた。北村薫がミステリを描いたフィクションに現実のミステリ作品が出てくると、(読者が現実に戻されて)興醒めしてしまうというような趣旨のことを言っていたことがあるが、その言葉の意味を実感させられた。実際にゲームでやったら面白いとは思うのだが、いささかやり過ぎだったかと思われる。このあたりは読み手の好みによるだろう。
特異な構成の建築物が出てくる以上、その謎の向かう先は予想される。しかもシリーズの四作目である。当然そのあたりの仕掛けは作品の本丸を飾るための装置に過ぎない。しかしながら、その装置に施された仕掛けは見事であり、序盤であさっての方向に行っていた興味を引き戻すのには十分であった。贅沢を言えば、建物の煩雑さをもっと分かりやすく書けていれば、なお良かった。このあたりで流し読まれて、謎解きの爽快さが半減してしまうことがあったとすれば、非常に残念なことであると思う。
今回は作品紹介でも謳っている通り、フーダニットをメインの謎に据えているが、これは非常に見事であった。読者に対して必要十分なヒントを提示しており、実にフェアだと言える(作中で自らそのことを言ってしまうあたりはどうかと思う)。ラブコメ的要素が割りと前面に立っているが、その中身は紛うことなき本格ミステリである。これは疑いようがないことだ。