026:マリオネット園

ミーハー。それは毎回のことではあるが、今回は序盤の暗号のくだりで、それが顕著に出ていた。北村薫がミステリを描いたフィクションに現実のミステリ作品が出てくると、(読者が現実に戻されて)興醒めしてしまうというような趣旨のことを言っていたことがあるが、その言葉の意味を実感させられた。実際にゲームでやったら面白いとは思うのだが、いささかやり過ぎだったかと思われる。このあたりは読み手の好みによるだろう。
特異な構成の建築物が出てくる以上、その謎の向かう先は予想される。しかもシリーズの四作目である。当然そのあたりの仕掛けは作品の本丸を飾るための装置に過ぎない。しかしながら、その装置に施された仕掛けは見事であり、序盤であさっての方向に行っていた興味を引き戻すのには十分であった。贅沢を言えば、建物の煩雑さをもっと分かりやすく書けていれば、なお良かった。このあたりで流し読まれて、謎解きの爽快さが半減してしまうことがあったとすれば、非常に残念なことであると思う。
今回は作品紹介でも謳っている通り、フーダニットをメインの謎に据えているが、これは非常に見事であった。読者に対して必要十分なヒントを提示しており、実にフェアだと言える(作中で自らそのことを言ってしまうあたりはどうかと思う)。ラブコメ的要素が割りと前面に立っているが、その中身は紛うことなき本格ミステリである。これは疑いようがないことだ。

北村薫サイン会

amaikoi2006-02-11

TRICK+TRAPリニューアル記念てことで開催された北村先生のサイン会に行ってきました。トークショウ後のサイン会の時にはびたいちしゃべれなかったけど、今回はちょこちょこお話させていただきました。よかったよかった。
さすがに人が多かったなぁ。Trick+Trapなのでいつものように時間交代制なんだけど、1回の人数は島田先生の時より多かった気がします。
リニューアルされた店内は、ほんのり商品の品揃えが変わっており、オリジナルのカバーや月一のフリーペーパーも出来たとのこと(もらいました)。通う楽しみが増えました。

025:記憶の果て

記憶の果て (講談社ノベルス)

記憶の果て (講談社ノベルス)

冗長。刊行が98年ということで、そのあたりの時代を実に反映した中身だと思う。良くも悪くも若さが出ているデビュー作。この人好きな人って佐藤友哉も好きなんではないだろうか? なんとなく質感が似ている感じがする。なんだろう、諦観っぷりか? この作品を起点として、どのように変化していくのかを読みたいと思った。飛び石で作品を読んでいたので、未読作品をどんどん潰していきたい。

024:硝子細工のマトリョーシカ

硝子細工のマトリョーシカ (講談社ノベルス)

硝子細工のマトリョーシカ (講談社ノベルス)

力作だと思う。いささか煩雑すぎた印象はあるが、アイディアとそれをきちんと形にしたことは素晴らしい。ただ、あまりに構造を強調しすぎているので、予想の行き先が限定されてしまい、結果としてネタが割れやすくなっている気がしないでもない。伏線の張り方などは流石なので、人に薦めやすい作品ではある。あと、これはいつも思うのだが、女性キャラがなんか微妙。

023:袋綴じ事件

袋綴じ事件 (講談社ノベルス)

袋綴じ事件 (講談社ノベルス)

微妙なギャグ満載のノリに、正統派の仕掛け。いつもと変わらぬ石崎テイスト。前者に辟易し、敬遠する読者が多いのは残念なことだ。そういう意味では、評価されにくい作家かもしれない。冊数を重ねれば、あのノリにも慣れて(あるいは、麻痺して)くると思うので、是非とも読み続けてほしい。これは東川篤也も言えることだ。どちらもミステリに対する姿勢は真摯なのだが、その部分が理解されていないことが多いような気がする。

022:バッテリーⅢ

バッテリー 3 (角川文庫)

バッテリー 3 (角川文庫)

ツンデレ。は、さておき、まがりなりにも児童向けの作品としてこの作品を書いているのだから、あさのあつこという作家は恐ろしいと思う。自分の考えを言葉にし切れていないので、今の時点であれこれ書くことは避けるが、Ⅵを読み終えるまでにはなんとかしたい。

021:ブラックエンジェル

ブラック・エンジェル (創元推理文庫)

ブラック・エンジェル (創元推理文庫)

話の落としどころに驚愕した。ファンタジー要素を巧く使い、作品に込めたメッセージを効果的に浮かび上がらせていた。が、なにせ話の落としどころに驚愕した。