猫丸先輩の感想

猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)

猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)

お待ちかね猫丸先輩の新作。「ある事象に対してひとつの解釈をつけるけど、それが本当に真相とは限らないよ。だからタイトルにも"空論"って書いてあるでしょ」という倉知先生らしさが前回*1に続き、存分に味わえます。猫丸先輩の軽妙な語り口は言わずもがな素晴らしいです。
ただ、そのスタイルが定着しているからこそ、猫丸先輩自体が別解の存在を語ってしまうのは余分なんじゃないかなと思ってもしまいます。ゆきずりの事件の場合には注釈つけてやる必要があるんだろうけど、何度も論理を披露している八木沢あたりは猫丸先輩のスタイルが分かっているだろうから、猫丸先輩本人がわざわざ言わなくてもいいんじゃないかと。あーでも八木沢だからなぁ。
収録作の中では「な、なつのこ」と「子ねこを救え」が好きです。作中の中でもとりわけ論理が飛躍してる感のある作品ですが、前者の遊び心と後者の猫のかわいさには敬意を表します。ラストの「夜の猫丸」もよかったなぁ。油断してるとこういうの出してくるから倉知先生はほんと曲者だよな(ほめてます)。
あと1年のうちに新作を2作も出したという点が最も評価すべきポイントだと思います。

*1:前回のは"空論"を"推測"に置き換えてください